加藤恭

TPPは、ざっくり言うと自由貿易協定(FTA)と異なり、物だけでなくサービス、知的財産、人の移動なども含む包括的な自由化をめざしている協定です。 よって、この協定を締結すると、10年以内に原則すべての品目の関税がゼロとなります。 特許では、米国が基礎研究の大半のパテントを保有しております。TPP締結の保護強化推進により知的財産権の拡大解釈から、応用技術中心の日本メーカーに対して、これまで以上に知的財産権の使用料を請求してくることが予想されます。 具体的には、著作権について「死後70年」、隣接権についてはEUより更に25年長い「発行後95年」に延ばしてください、というような内容になるでしょう。 世界の著作権では死後70年に延長した国はまだ半数にも至りませんが、TPP交渉参加国では既に70年が多数派です。よって、交渉に加わればまず延長は濃厚であり、そうなると現在、国内で安価に入手できているコンテンツが手に入りにくくなることが考えられます。 米国は年間10兆円も著作権で収入を得ておりますが、日本はクールジャパンと言われている割に、著作権で年間5,000億円の赤字を出しており、米国や海外へ支払っている金額の方が多いのが現状です。 更に真正品の並行輸入について著作権者にコントロール権を与えよという内容が盛り込まれた場合、日本の赤字は更に膨らむでしょう。ゆえに著作権の管理方法や活用方法を米国的にするなど見直しが必要となるでしょう。 現在、通常の著作権侵害には「最高で懲役10年又は1000万円以下の罰金」などの罰則がありますが、これは親告罪です。この親告罪が、非親告罪化します。 米国などの外圧から、日本国がこれまでになく著作権保護を推進する可能性があります。 日本は、1911年にようやく米国を始めとする他の列強と日米通商航海条約等の平等条約を締結し、関税自主権の完全な回復が現実化させた経緯がありますが、あれからちょうど100年目の今年、自ら関税をゼロとする全面放棄協定に参加しようとする日本はどこに向かうのでしょうか?推移を見守りたいと思います。